帰ってきたFerrari 308GTB
2005年5月

昨年の4月に修理に出したFerrari 308 が13ヶ月ぶりに我が家に帰ってきました。思えば、この車がガレージから姿を消してから1年以上も経過しています。故障はタイミングベルトのプーリーのシャフト部分からのオイル漏れで、この漏れたオイルがエキゾーストの遮熱板の上に落ちる為、このオイルが焼けてエンジンルームから煙が立ちのぼるといったものでした。知り合いのモータースに持ち込みバラしてみたらオイルシールの奥にあるベアリングもガタが来ていて、何とベアリングのボールが3分の1程度しか残っていませんでした。そう言えばこの辺りから変な音が出ていました。ここからが苦労の始まり。ベアリングを抜くだけの話だったのですが、このベアリングが抜けない!ドイツ製の工具を取り寄せて抜けるまでに1年掛かりました。(と、言うよりモータースの方で、手を付けようとしなかった)抜けてからは簡単。組み立て終えて5月中旬にようやく車検もとり、戻ってきました。動かない車でも1年間、保険料や自動車税は掛かりますから結果的には結構高い修理につきました。

モータースで1年眠っている間、真上に照明の蛍光灯があった為、虫が集まりその糞で車体は真っ黒。それでも納車時には綺麗になって戻ってきました。
ことし(2005年)の4月で10年乗り続けた車ですが、このリアビューは飽きません。いつ見ても綺麗!と思えます。この当時の車は直線でデザインされた車が多く、自分の好みも曲線より、直線の構成です。
現在の車は曲面だらけの車ばかりですが、これはデザインと言うより、燃費の向上やコストの削減の為に鉄板を薄くしていて、この薄い鉄板に強度を持たせる為には曲面にするしかないと聞いた事があります。確かにあの薄い鉄板で平面の構成では強度は出ませんね。
シートがだいぶくたびれてきていますが、張り替えるのも惜しいと思いそのままです。この年までのFerrariは牛革ではなく豚革の為、どうしても劣化してしまいます。人工革で張り替えれば綺麗になるのでしょうが、そのうち...です。ダッシュのメーターは左下が時計と油温、正面の左右はスピードとタコ、その間に油圧、水温、燃料ゲージ。センターコンソールはヒーターコントロールやワイパースピード、ハザード等です。クラクションはエアーを使ったホーンタイプのものですが、いささかポンプがへたって来ているため、音に迫力がありません。
現在走行距離は32340マイル。10年前の購入時には18050でしたからこの10年間で走った距離は23000Km。何とも役に立たない車です。実用価値はゼロに近いですね。カミさんを乗せてスーパーに買い物に行くと荷物は足下に置くしかありません。
写真左)この当時のFerrariの特徴にもなっている左右のエアーダクト。左側のダクトはオイルクーラーに繋がってオイルの冷却用です。右側はそのままキャブ手前のエアーエレメントに繋がっています。
US仕様の為に前後の左右にも方向指示器が付いていますが、ヨーロッパ仕様ではこれは無いとか?

写真左上)エンジンルーム。ミッドシップですから後ろのエンジンルーム内です。V8エンジンで横置き。前バンクと後ろバンクのそれぞれにポイントとデスビが付いています。点火タイミングの進角はガバナースプリングを使った機械式ですから前後バンクの完全な点火タイミングをとれるのか疑問です。1デスビにするキットも出ていたようですが、今では見つからないでしょうね。
写真右上)後ろバンクのブロックの左右に付いている気ガス規制の為のエアーポンプ。濃い混合機を送り込む事で燃焼温度を下げ、NOxを減らしているため、不完全燃焼状態のガスがエキゾーストに出て行ってしまいますが、ここにエアーを送って再度燃焼させて排気ガスを綺麗にする構造のようです。なんとも情けないシステムなのですが、このポンプを働かせるとアフターファイヤーが酷いのでベルトを外して殺してあります。
写真右上)エキゾーストANSAの物が付いていましたが、元々のオリジナルなのかどうか分かりません。かなり大きな甲高い音がします。Ferrari独特のあの乾いた音はこのマフラーによるもののようです。10年間、日本の湿度の高い腐りやすい環境で乗っていても未だに破けません。けっこうしっかりした作りみたいです。
写真右下)運転席からの後方視界はこんなもの。リヤウィンドの高さは20cmはありません。でも、この視界の悪さは慣れればあまり問題にはなりません。バックしなければ済む事ですからね。
写真上)フロントのボンネットの中。ラジェター容量はかなり大きく、これに電動ファンが2基付いています。スペアタイヤのスペースは空の状態ですが、このままだとフロントの荷重が足りないようで、路面が荒れているとだいぶ不安定になります。砂袋でも乗せてやった方がいいのかもしれません。

1994年にLAで購入し、1995年春に車検をとってから10年経過したFerrari308GTですが、故障するたびに「治ってきたら処分しよう!」と思います。でも、実際に治って来るとまた乗ってしまうんですね。これがまた苦労する事になるのは分かっているのに....。
しかし、10年間も苦労させられ続けると愛着も湧くものです。20代のスーパーカーブームの頃は夢の車だったFerrariが家のガレージに有るのですからあの当時の自分から見れば夢のような今なのかもしれません。
この車を手に入れるきっかけとなった近所の先輩は一昨年(2003年)他界してしまいました。この先輩とロサンゼルスまで行って、数日間車探しをして回った時の事もずっと昔の事のように思えます。

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